中米のWTO加盟交渉が妥結

 中国のWTO(世界貿易機関)加盟交渉が、1115日米国との間で妥結しました。今後米国以外の各国との個別交渉を経て、来年上半期には正式加盟となる見込みです。

 中国としては、今後の貿易の発展のために世界の共通の土俵に立ちたかった、諸外国は何とか中国を共通の土俵に引き入れたかったというそれぞれの思惑があり、その意味では伸展であると言えるでしょう。

 「念願がかなった」という見方と、ある雑誌では「WTO加盟、中国産業に激震」と載せるなど、評価は様々です。日本に対しても米国などからは「市場の閉鎖性、構造的国内産業保護、外国人には参入できない企業慣行」がよく指摘されます。その日本人から見ても中国では、はるかにすごい「障壁」があって、外資系企業の不満になっています。「障壁」はすぐに取り払われるわけではありませんが、数年から十数年かけて緩和され、WTO加盟国と同等のシステムになっていくわけです。

 逆に中国企業の現場から見れば、国営企業の改革がもたついている間にどんどん外国企業が中国市場に参入してきて、その資本力と技術力・サービス精神で自分たちの市場を奪ってしまうのではないかという危惧があるわけです。「障壁」がある中でも、すでに現在いくつかの分野でそのような動きが進行しており、現実味を帯びた危惧と言えるでしょう。以下、「中米WTO二国間協定」の要約を掲載します。(資料は、日中経済貿易センター「業務連絡報」1131号より抜粋)

 1.協定の要点

 米中WTO協定は全ての農産物、全ての工業製品、全てのサービス分野に適用される。

 工業関税

 工業製品に対する中国の関税率は1997年の平均24.6%から2005年までに平均9.4%へと下がる。

 米国の優先工業製品に関しては、関税率は7.1%まで下がるものとし、引き下げの大半は2003年までに完全実施される。関税引き下げは、木材、紙、化学製品、資本設備および医療機器を含む広範囲な製品が対象となる。

 情報技術に関しては、コンピュータ、半導体、および全てのインターネット関連機器などの製品に対する関税を平均13.3%から2005年までにゼロにする。

 農業

 米国の優先横産物に関しては、平均31.5%の関税率を遅くとも20041月までに14.5%まで引き下げる。

優先製品 協定前関税 協定後関税
牛肉 45 % 12 %
ぶどう 40 % 13 %
ワイン 65 % 20 %
チーズ 50 % 12 %
鶏肉 20 % 10 %
豚肉 20 % 12 %
全体の平均 31.5 14.5%

      
 中国はとうもろこし、綿花、小麦、米、大豆油を含む大量に取り引きされる農産物に対する市場アクセスを拡大する。

 中国は輸出補助金を撤廃する。これは特に米国の綿花および米の生産農家にとって大きな意味を持つ。

 中国は、農産物の民間貿易(民間部門間の貿易)を初めて許可する。

 サービス

 工業製品に関して中国は、仲買人抜きで輸出入をする権利−いわゆる貿易権−と、それに加えて卸売、小売、アフターサービス、修理、メインテナンス、輸送を含む流通全般を営む完全な権利を初めて認める。

 この協定によって、通信、保険、銀行、証券、音声映像、専門家による様々なサービスなどを含む多くのサービス分野で市場アクセスが拡大される。

 2.主要な争点の解決

  • 輸入急増対応メカニズム
     中国は特別なセーフガードメカニズムに同意した。このメカニズムは、中国の
    WTO加盟後12年間存続し、市場を混乱させる、またはおそれのある中国からの輸入の急増に対処するために発動できる。

  • アンチダンピング
     協定によれば、米国は、中国からのダンピングに対して、現行の非市場経済対応手順を
    15年間にわたって適応し続けることができる。もちろん中国は、特定の分野または経済全体について、それがすでに市場ルールに従っており、この特別な措置の対象とはならないかどうかを米国法に基づいて見直すことを米国に要求できる。
  • 映画
     未解決の問題の一つに、中国の映画輸入に対する厳しい制限があった。協定の前には、中国は年間最大
    10本の外国製映画しか認めていなかった。今回の協定で、中国は最初の年に現在の4倍の40本の映画を輸入し、3年目までにはこれを50本に増やす。そのうち20本については、収入を分配する。
  • インターネットアクセス
     今後
    10年間に中国におけるインターネットアクセスは大幅に増加すると予想されており、中国のテレコムサービスに関する同意が、インターネットサービスのあらゆる側面を対象にしたものであることを明確にすることが米国の優先事項の一つであった。協定によって、インターネットサービスは、その他の重要な通信サービスと同じペースで自由化されることが確実になった。
  • 衛星
     中国は、衛星を利用して通信サービス提供を認めることを明言した。
  • 自動車ローン
     中国は、加盟と同時に外国のノンバンクが自動車ローンを提供できるようにすることを確約した。これは自動車の輸入、流通、販売、融資、メンテナンス、および修理に関する合意事項と合わせて、この重要な部門を米国の産業に対して開放するのに役立つ。

  • 自動車県税引き下げの前倒し
     デリケートな分野において双方ともに利益になるような解決を見つけるための努力の一環として、中国は、段階的期間を多少延長する代わりに、関税引き下げ開始を早めることに同意した。この結果、市場アクセスはより早く実現し、しかも関税は2006年7月1日までに現行の100〜80%から25%へと引き下げられる。
  • 通信
     付加価値およびページングサービス事業における外国資本比率を50%に制限するという中国の要求に米国が同意する一方、中国は、外国資本比率を最初の
    2年間に大幅に増加させ、地理的な制限を速やかに撤廃することに同意した。中国は、付加価値およびページングサービス事業における外国資本比率を、加盟後2年で35%、4年で51%まで認めることを示唆していた。協定では、最初の年に49%、2年目に50%の比率を認めることになった。
  • 生命保険
     生命保険事業における外国資本比率を
    50%に制限するという中国の要求に米国が同意する一方、中国は、地理的な制限の撤廃と資本比率の引き上げを最初の数年間に前倒しで実施することに同意した。


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