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メンツをつぶさない中国人 関西遼寧協会事務局 森下雅喜 ある日、中国にある私たちの会社に国税局の人が訪れた。昨年秋にも検査に来た人で、その時は「問題ありません。」と言って帰っていった。 今回は、「あなたの会社には問題があります。税金の支払い項目が営業税(税率5%)と増値税(税率17%)が混じっています。営業税分について適法であることの証明ができない場合、税率の高い方を適用する規定があります。差額は約10万元です。」と言って、帰っていったらしい。 会計担当者は恐れをなして、翌日国税局に赴き、「どうしたらいいのでしょう。」と正直に聞いてみた。すると国税局の人は、「罰金を入れたら15万元から20万元くらいになるでしょう。1週間以内にどうするかの返答をください。1週間たっても返答がない場合は、上司に報告して、正式な追徴手続きをとります。」と言った。ついでに、「1週間のうちに私の上司に手をまわして事をおさめるか、私に直接働きかけてもいいです。」とまで言ってくれたらしい。 誰が聞いても、これは「犯罪」だと言う。頭にきた私は、何人かの中国人に相談した。私の意見は、「如何にしてこの担当者の犯罪をあばき、新聞沙汰にし、クビにし、本人に腐敗堕落の結果を思い知らせるか」ということだった。しかし、相談した中国人の全てが「まあ待て、何とか方法を考えよう。」という意見だった。 「中国で仕事をしていこうとしたら、こんなことに怒っていたらいけない。本人は仕事の上では優秀な人間かも知れない。それによって、上司がどう見ているかはわからない。本人も追いつめたら『猫を咬む』かもしれない。彼の言っている追徴については、法的にはあり得ることなので、咬まれたら損だ。だから方法を考えよう。」というのだ。 結局私も、自分たちの会社可愛いさのために、中国の友人の考えた方法に従うことにした。その担当者は、彼のメンツが立つように考えたこちら側の提案を拒否した。仕方がないので、こちら側の第2案が実行された。第2案は逆に彼を脅す内容だった。そして2週間ほど経った頃、「この問題は消えた。」という報告を聞いた。結局私たちの提案が受け入れられたわけではなく、他の会社から訴えられて処分されたとのことだ。何か拍子抜けする結末だった。 ほぼ同じ時期に、瀋陽の私たちの事務所(瀋陽共同事務所)にも、衛生検査員が調査に入っていた。1階ではいまカレーとコ−ヒーの軽食店を営んでいて、その店の衛生検査である。流し台にまな板を置いて包丁を使っているのを見て、専用の調理台が必要と言って、許可を保留して帰った。専用の調理台を買ってきてからもう一度見てもらうと、「この調理台では認められない。」と言って帰っていった。 以前は、このような役人に対する専門職員がいて対処していたのだが、今はおらず、会計をしている女性が対応した。以前であれば、午前11時くらいに来て、少し見た後、こちらの専門職員が食事を一緒にして、許可証を置いて帰っていっていたのだ。 これについても頭に来て、すぐに瀋陽に電話して、その筋の人に「なんとかして」と頼んだ。しかし彼らは「そんなことは普通のことで、怒るようなものではない」とおだやかに言う。そして、有効な筋に働きかけて、さっさと処理してしまった。 最近、中国社会っていったい何だろうとよく考えさせられる。政治的・国家的には共産党が主導する「社会主義国家」であるが、経済の実態としては市場経済=商品経済=資本主義そのものであるだろう。「中国は社会主義国だ」という先入観がいけないのだ。江沢民氏は、「企業の社長でも、思想の正しい人は共産党への入党を認めよう」としている。ある人の意見では、次の全人代あたりで、党名さえも変えるかも知れないと言っている。いつまでも「共産党」にこだわらずに、実態に合わせていく方が自然だろう。 貧しさがあれば、人は必ず豊かになりたいと思う。私たちが子どもだった頃のようにみんなが貧しければ不公平感はあまり感じないが、まわりにはお金持ちがたくさんできてきた。今の境遇から、すぐ身近にいるあの人たちのようになりたい、と思うのが普通だろう。皆が豊かになれば、汚職・腐敗もだんだんと減っていくのだろう。そのように考えたい。 |
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