大連市投資環境改善座談会の概要

 

3月15日に開催された大連市当局と日本商工クラブの座談会の内容を紹介します。大連市では、投資ソフト環境を改善しようと、このような座談会・交流会に積極的に取り組んでいます。

 

出席者:(大連市側)李永金副市長、市党紀律検査委王会全書記、市人代傳明徳副主任他、市党委員会、人代、対外経済貿易委員会、公安局、外事弁など16名。

    (商工クラブ)領事館、事務局、会員企業約40社

【李永金 副市長】今年に入り、大連市は投資環境の改善、特に投資環境の中に存在する不正などの粛清に力を入れている。本日の座談会は以前と異なり、政府以外に市党委員会、人民代表大会、政治協商会議、党紀律検査委の責任者が出席。特に党紀律検査委員会は、主に党員の腐敗を取り締まる部門。本日、紀律検査委書記自ら出席したことは、大連市政府が取組む投資環境改善への支援、党幹部の取り締まり強化の決意を意味する。また、自由な意見、本音を聞きたいため、行政各部門の責任者を呼ばなかった。

 市政府は、国地域別に外国企業の意見を聞く会を開催する。意見や指摘された問題点を整理して各担当部署に伝え、必要であれば回答させ、問題は改善させる。意見が厳しいほど、大連を愛する貴重な意見として受けとめたい。どんな厳しい発言であっても、あとで報復されるようなことは絶対にない。もし報復があれば当事者を厳しく処分する。同席の党紀律検査委書記は私の大きな後ろ盾。だから是非、率直な意見、長い間の苦情や不満を全部吐き出して欲しい。

 

【江口 大連日本商工クラブ会長】何時もと違う工夫された懇談会を持っていただき感謝。我々は率直な意見を申し上げる。単に要望、不満だけでなく、できるだけ建設的な提案をしたい。

 中国での日本からの投資は全体的には減っているなか、大連より上海への投資が多いという事実がある。その理由は単純ではないが、紀律も含めた投資環境は、大連は上海よりも良いという状態を是非お願いしたい。我々と市政府との一致点は、大連を中国の中で最も投資環境の良い都市にしたい、つまり大連を愛しているということ。この共通認識の上で要望し、問題解決を図りたい。

 

【日系企業】房地産交易手続費;事務所賃貸借契約の登記の際、大連市の房地産交易管理弁法では3%、実際の運用は2%がかかる。賃貸契約の全期間契約額に課される。上海では登記時に1回限り定額で100元。北京ではないと聞いている。不合理な行政手続費の徴収を是非やめていただきたい。

 

日系企業】総投資額と資本金;総投資額は、免税で輸入できる設備の金額の上限となるので、重要な意味を持つ。これを超えた場合には課税、または輸入そのものができない。投資額の実績について、税関の実績の取り方は取得価格を累計しており、設立後の企業規模の拡大がなくとも設備の更新、工具類の補充は必ず必要で、これを免税で輸入しようとすると総投資額を増やさないといけない。免税枠の確保のためには、永久に資本金を増やし続けることになる。改めていただきたい。

 更新設備は、一定の条件を満たせば総投資額の枠に拘わらず免税輸入が可能であるという文件が昨年税関から出た。これは、いつ実施されるのか。これが実施されれば上述の資本金を永久に増やす問題が解決される。

 

日系企業】工場を運営するにあたり、最大の問題が税関に関係した問題。税関は大連市政府が直接指導できないことは理解しているが、書面を準備したので説明したい。

 (書面は、@開発区外への保税委託加工の制限問題、A加工貿易管理の企業分類見直し早期実施、B検験検疫局の効率化、C税関業務の改善、D港の滞貨費用、E保税材料の登記手帳管理、について要望)

 @は保税材料の開発区外への外注加工を厳しく制限するという、昨年末からの開発区税関の政策について。税関の立場としては、保税貨物に対する十分な監督を行なう責任があるということだが、既に区外に加工を外注している企業にとっては大きな問題。今年2月の開発区税関との話し合いで6カ月間は延長を認められたが、その後には強い不安がある。我々は、部品産業、裾野産業を誘致したいと努力しているが、この税関の政策はこれらを台無しにするもの。また、中国企業にとっても日系企業からの受注を逃すことになり、大連市の産業発展にとってマイナス。弾力的な運用を要望する。

 Eの加工貿易の登記手帳については、この制度自体の問題として、原材料、部品の必要量を見込んで保税輸入するが、実際に生産すると、必ず見込みと差が生じるということがある。避けられないこの差に対して、常に税金や罰金の問題が生じる。また、登記手帳は、材料、部品の規格毎に記帳するよう益々細分化しており、記帳ミスも起こりがちになるが、単純なミスでも直ぐに罰金を科される。単純ミスには、まず指導をすべき。

 

李副市長】外注加工の問題は、既に認識している。大連で部品材料展を6回やったが、市内の中国企業が開発区の外資企業の部品を受注する例も生れている。この問題は、外資企業のみならず、中国企業にとっても影響が大きい。もう一度、市政府と税関で柔軟策を研究する。

 

日系企業】港の荷揚げ作業の質が悪い。2年前の座談会で指摘したら直ちに改善されたが、その後また悪化。荷揚げ後、トラックで引き取りに行くと保管が悪く、乱雑で探しづらい。港に探すよう頼むと、「自分で探せ」と言われる。置き方が乱雑なので回りの貨物を動かすように言うと、「自分で業者を探せ」と言う。貨物が損壊していた時、証明書を出すよう頼んだところ、拒否されたため保険の請求ができない。大連港は良いが、香炉礁港が悪い。

 

日系企業】工場を拡充するよう大連市政府から要望され、チームを作って検討したが、現状では難しい。鍵となる部品調達は大連では難しく、上海や華南から調達すると輸送費がかさむ。投資の判断の基本はコストが全て。当社も研究は続けるが、部品以外のコストについては市政府の努力を期待する。

 電力料金の構成を見ると、高価費というものが30%強を占めているが、これは発電能力が足りない時代に大口の需要者に課した費用。電力供給に余裕ができた今でも徴収を続けている。開発区の各種料金の見直しをお願いする。当社のコストの中で、人件費が占める比率が5年前の3.5倍になっている。今は何とかやっていけても、将来は華南や東南アジアより投資条件が劣ることが懸念される。

 国家規定の遵守が最も大切。しかし、全てがコストに結びつくということを念頭に置き、大連が最も低コストという環境を作るように、限度ぎりぎりの運用をお願いする。

 

日系企業】大連の経済発展の報道を良く見るが、99年の財政は15億元の赤字。大連の経済発展のリスクが明らかになり、リスクが計算できれば外国の銀行も進んで融資をする。銀行の支店は半永久的な機構として設置されている。リスクが明らかになることが必要。

 

李副市長】昨年の財政支出は85億元、収入は70億元だが、支出中の後に還付される中央政府への上納、別計上されている予算外収入などを入れた99年の財政収支は若干の黒字。中国の財政会計制度は国際的でないので分かりにくいが、ここ数年はバランスを保っている。

 

日系企業】外国人用のオフィス、住宅の衛星アンテナが撤去を求められている。外国人にとって、単純に、北京や天津で見られる衛星放送の番組がなぜ大連では見られなくなるのかということ。他の都市の事情もよく調べて欲しい。

 合弁と独資の違い、あるいは担当者によって、行政当局の扱いが違うことがある。一定の公平性、全体に改善の方向にあるということが感じられることが大切。

 

李副市長】公平性などは、担当者の素養の問題もあるが、改善すべきことは確か。

 衛星アンテナは、国家ラジオ・テレビ部の要求に従うものだが、既設のアンテナに対しては、強制執行はしない方が望ましいという結論を出した。

 

領事館】経済紛争に関連して当事者のパスポートが没収されることがある。裁判所が執行するもので適法だが、民事でパスポートを没収する例は世界でも少ない。慎重に考えて欲しい。

 

李副市長】政府は司法に干渉できないので、党の政法委員会の高爾坦書記が調べて回答する。

 

日系企業】合弁ホテルの紛争に対する法院の不当判決について;中国側経理が勝手にホテルを抵当に入れ、日本側の総経理のサインを偽造して多額の借り入れをした。問題となった後、法院は事情をろくに調査もせず、ホテルの資産を差し押さえて営業停止にし、私のパスポート没収、私の居所を聞き出すために従業員を監禁し殴るなどを行った。その後、市政法委、検察院、政府などに何度も手紙を出したが、一向に進展しない。自分は華僑なので領事館の保護も受けられず、誰が保護してくれるのか。

 以前開発区で製造、輸出の仕事をしたが、開発区の投資環境は5年程前に比べて大分悪くなった。税関等の規則が変更されても新しい規定が通知されず、新規定に沿っていないといって罰金を科される。新規定は直ぐに通知して欲しい。

 また、今はある娯楽施設を設置したが、設備等が届いているのに、遼寧省公安局の許可が3ヶ月経っても未だ下りない。何とかならないか。

 

日系企業】増値税の先徴税後還付の方法は、大連市は国家の規定と違っている。国の先徴税額は付加価値の17%だが、大連では輸出額の17%。当社は、毎月1億円の輸出額に対し、8千万円の材料を輸入。老企業なので来年から新企業と同じ増値税を徴収されるが、国の規定なら付加価値2千万円の17%の3ヶ月分、約1千万円で済むが、大連なら1,700万円の3ヶ月分約5千万円を先納付しなければならない。もし、来年から売上の半分の資金を積むことになるのなら、当社は大連から撤退するだろう。

 

李副市長】国が課税対象額は付加価値と決めているのなら、大連も必ず同じにすべき。新しい政策は国が決めるが、地方国税局はこれをより厳しく執行することはなく、柔軟に運用すべき。1社だけの問題ではないので、国税局と相談する。

 

日系企業】昨年、工業団地を輸出加工区にする話があったが、進展はあったか。

 大連の投資環境について、治安、衣食住、環境は良い。日本語人材の多さは中国一。しかし、経済活動の環境は一番とは言えない。第1に規制が多過ぎる。人の採用、保税材料の外注加工、投資総額、保安、商品検査、などなど。日本でも規制緩和が進行しているが、大連の規制を緩和して欲しい。第2に、WTO加盟を機に、税金、税関、外為管理などを国際基準に合わせて欲しい。この2つを実行すれば、大連の投資環境は相当良くなるだろう。

 

李副市長】昨年、海関総署と国務院は、全国数ヶ所に輸出加工区の設置を決定。大連市では、保税区2期工事区が積極的に申請。市政府としては、優遇が認められるなら日本工業団地の残った80万uの譲渡促進に資すると考え、日本工業団地も輸出加工区にしたいと考えた。既存企業は閉鎖されては国内販売に悪影響があるので、内販を行う企業は区別し、不利になることは避ける考え。しかし、国務院は少数の場所に絞って認めることが予想され、工業団地が輸出加工区になることは難しいと思う。

 

日系企業】行政の窓口に関する批判が多い。例えば環境局が、直ぐに罰金と言い、次に罰金の値下げ交渉をする。問題があれば改善するので、直ちに罰金というのは止めて欲しい。

 

李副市長】市政府の会議で罰金が問題になった時、環境局を名指しで批判した。根拠となる法規がないのに最も多くの罰金を取っていたのが環境局だった。

 

日系企業】福利厚生費が複雑になってきている。野菜手当てに6元、新聞購読手当てに10元など、これらを一本化して欲しい。また、これら手当てが義務なのかも不明瞭。

 

李副市長】給与の他には、国家が決めた各種社会保険、住宅基金がある。その他、国家が認めた費目はリストを作る。新聞手当ては公務員の規定で、企業では義務ではない。

 

日系企業】自動車の排出ガス規制が今日から実施される。既存の自動車には、排ガスの有害物質を除去する装置を付けるというものだが、付けても規制値を超えたり、費用がかさむことから取りつけない車も出てこよう。しかし、除去装置を取りつけていないと、営業停止や運転手の免許証取り上げがあると聞いている。実際にはどのような方針で実施するのか。

 

日系企業】従来は6ヵ月の契約で臨時工を採用していたが、規制が始まった。1年間に満たない契約に対して、1人1ヵ月20元の管理料を労働人事局から徴収され、契約工はさらに教育費として、月50元徴収されている。

 

李副市長】政府、党、人代、政協会議を代表し、多くの貴重な提案、批判に感謝。全ての意見を整理し、全ての関係部門の局長、検査院、法院、党委員会も含め、伝達する。その後、一定期間内に各部門に調査させ、遅くとも4月中に各国・地域の企業へ回答する。

 個別の部門担当者には、態度、効率の問題、たかり、不当な費用徴収や罰金もある。一部の公務員は、賄賂がないと動かない者も居ると思う。司法当局でも公平を欠くことすらあるだろう。これらの全てが、大連のイメージを損ない、外国の投資者の利益を損なっている。政府としては、公務員の紀律を正して改善していく。様々な面で柔軟な投資環境を作らねばならない。投資環境に関する批判、提案は随時出して欲しい。投資ソフト環境の改善は、政府と外資企業の共通の利益。是非、共に努力していきたい。

 大連市の日系企業は、99年末の統計で1,864社が認可された。累計の契約額は45.8億ドル、投資実行額は33億ドル。99年末までの大連市全体の投資受入れ実行額は80億ドルなので、日本は全体の40%以上を占めている。日本の78%という投資実行率は、世界の中で群を抜いて1位。大連の開放のシンボルは開発区だが、当初、開発区に進出した外資企業の7割は日本から。大連の貿易相手は、輸出入とも60%が日本。大連および開発区の最大の支持者は日本であり、日本がなければ今日の大連はない。大連市政府は何時までもこれを忘れることはない。

経済のみならず、文化、人材など幅広く日本と交流を深めたい。1000社余りの日系企業の全てが利益を上げ、成功して欲しい。また、更に多くの企業に進出して欲しい。更に多くの企業に中国市場に適した製品を生産して欲しい。禁止品目以外は大いに内販を支援したい。

また、多くの大連企業を日本へ出して交流させ、合作させたい。      以上


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