『公害調停記録集』発刊のご案内

〔 豊能郡美化センターダイオキシン公害調停の記録 〕

  

 

「豊能郡美化センターダイオキシン公害調停」

記録集編集委員会

 1997年(平成9年)11月、「豊能郡美化センター」に隣接する能勢高校の農場から2700pg-TEQ/gのダイオキシンが検出されたことから発覚した高濃度ダイオキシン汚染問題は、その後の調査で更に高濃度の汚染であることが明らかになりました。

 また、ごみ焼却炉がダイオキシンの発生源であり、焼却炉の構造に欠陥がある場合には周辺の土壌や水質等も汚染している現実が突きつけられました。更に焼却炉の解体工事に従事していた労働者に二次汚染が発生したことも明らかになり、多くの人々にダイオキシン汚染の恐ろしさを実感させることになりました。

 その結果、人々の関心は、近隣の焼却施設への不安に止まらず、将来の子供達の安全までに広がっており、これまでの「焼却処理一本やり」のごみ行政のあり方を「発生源からの抑制」に転換させなければならない緊急の必要性があります。

 ところで、前代未聞の高濃度ダイオキシン問題に直面した能勢町・豊能町(両町の「環境施設組合」)は、健康被害の不安や農作物への風評被害に曝された住民に対し、直ちに具体的な対策を執ることができませんでした。このような行政に対し、施設周辺の住民をはじめ豊能郡の住民らは、@関係資料の開示、A土壌汚染調査の実施、B健康被害調査の実施、C焼却炉の改良工事の中止(廃炉)、D被害者への補償、Eごみ減量化に向けた政策の確立、F三井造船らに対して損害を補填すること等を求めて、大阪府公害審査会に「公害調停」を申し立てました。

 公害調停では、2000年(平成12年)7月に環境調査・健康調査を今後20年間実施すること、飲料水対策など周辺対策を実施すること、行政、住民、学者を構成員とする対策協議会を設置すること、三井造船らが総額7億5千万円を補填すること等を内容とする「調停条項」を合意しました。

 しかし調停条項は問題解決へ向けた「中間合意」に過ぎず、汚染土壌の無害化処理の問題や、美化センターの労働者の労災裁判は現在も継続しています。

 

 「豊能郡美化センターダイオキシン公害調停」は、合意をもって一応終了しましたが、「調停条項」という中間合意がなされるまでの調停手続の経過を記録することは、今、全国でごみ問題や焼却場問題、ダイオキシン汚染問題に直面している住民の方々に運動の経験を伝えることになるとともに、公害行政に従事している行政の担当者にとっても多くの示唆を与えるものになると思います。

 

 特に行政の担当者の方々には、住民らが行政に何を期待していたかをご理解いただき、住民と対峙するのではなく「協働」の視点でごみ問題やダイオキシン汚染問題の解決に尽力されることを期待します。

 また弁護士や議員の方々にとっても公害調停手続の「生」の記録に接する機会は非常に少なく、わずかに「公害紛争処理白書(公害等調整委員会)」や「公害紛争処理法の解説」等で実態を把握するのが実情であり、この記録集は資料としても貴重です。

 さらに「記録集」には、調停の記録に止まらず、今後、全国の最終処分場等のダイオキシン汚染対策として問題化することが予想される「汚染物の処理問題」や「ジオメルト法」の問題点、並びに焼却場等で高濃度のダイオキシンに暴露した従業員の労災問題についても「労災訴状」等の資料とともに一章をもうけ、今後の課題を明らかにしています。

 なお「記録集」内容については別紙の「もくじ」を参照して下さい。

 

記録集購入ご希望の方は、冊数、住所、氏名、電話番号を明記し下記事務所宛FAXにてお願いいたします

  Fax:06−6314−4187 (あさひ法律事務所:小田または横井宛)

尚、この記録集の売上に関しましては、「住民の会」および「労災訴訟」の費用に充当させていただきます。

 


『公害調停記録集』
A4版 330頁  (2001年2月 発 刊)
特別販売価格(送料込み) ¥5,000円

 

                                               

豊能郡ダイオキシン公害調停記録集もくじ

 

はじめに

第1章  発 端

「豊能郡美化センター・ダイオキシン公害調停とは」 弁護団長・弁護士小田耕平 ……………… 6 

「疑惑をつかんだ瞬間」 能勢町・八木 修 …………………………………………………………… 10 

「改造工事か、実体解明か」 豊能町・秋元美智子 …………………………………………………… 12 

「焼却場設置から廃炉まで」 能勢町・荒木  保 …………………………………………………… 14 

「稼働中の炉の下で」 能勢高等学校職員 ……………………………………………………………… 16 

「生活を脅かした突然のダイオキシン」 能勢町・菅原玲子 ………………………………………… 18 

「『能勢酒造株式会社』が受けた風評被害」 能勢町・子安鎮郎 ……………………………………… 20 

「みんなでがんばろうや!」 能勢町・川村佳子 ……………………………………………………… 22 

 美化センター周辺環境・健康影響調査結果 …………………………………………………………… 24 

施設組合調査T・U・V/厚生省調査/労働省調査                   

                                          

第2章  活 動                                        

「法的手続等に関する検討資料」 弁護士 小田耕平…………………………………………………… 36 

「公害調停の場へ」 豊能町・松尾信子 ………………………………………………………………… 38 

「住民の視点で発信しよう」 能勢町・藤岡民江 ……………………………………………………… 42 

「セベソ事故と公害調停」 豊能町・中山勝也 ………………………………………………………… 44 

「豊能郡教職員組合としての取り組み」 豊能郡教職員組合(JTU) ……………………………… 46 

 座談会:事務局『公害調停の2年間を振り返って』 ………………………………………………… 48 

『公害調停ニュース』1号〜13号 ………………………………………………………………………… 52 

                                               

第3章  過 程                                        

申請人からの申請書・意見書・上申書 …………………………………………………………………… 78 

弁護士からの手紙 …………………………………………………………………………………………… 174 

      『要求』を実現する道筋について   弁護士 小田耕平                

      状況と選択肢についてのメモ     弁護士 池田直樹                

被申請人からの意見書・上申書など ……………………………………………………………………… 183 

                                               

第4章  合 意                                        

調停調書 ……………………………………………………………………………………………………… 222 

調停案についての弁護団の意見と解説 ……………………………………………………………… 226 

「すすめる会」世話人会の見解 ……………………………………………………………………… 230 

公害調停Q&A ………………………………………………………………………………………… 231 

「全国的なダイオキシン問題の取り組みから見た、この調停の位置づけ」              

止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク 山崎 清 ……………… 232 

弁護団つれづれ草『ダイオキシン公害調停にかかわって』 …………………………………………… 234 

小川和恵・津田浩克・西村英一郎・中島宏治                      

池田直樹・小林邦子・伊藤明子・小田耕平                       

                                                

第5章  課 題                                        

残された課題に立ち向かう 能勢町・八木 修 ………………………………………………………… 240 

土壌浄化法の問題点 止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク・中南 元 ……………… 244 

美化センター労働者の血液濃度から分かること 摂南大学・宮田秀明 ……………………………… 246 

「ダイオキシン労災裁判を決意して」〜竹岡光夫氏、畑中克男氏に聞く〜 ………………………… 248 

労災訴状(能勢ダイオキシン裁判)………………………………………………………………………… 250 

                                               

第6章  検 証                                        

ダイオキシン被曝の健康調査を考える 北大阪医療生協・医師 衣川文明 ………………………… 280 

責任を負うべきものは誰か   弁護士 小田耕平 …………………………………………………… 295 

公害調停とリスク論について  弁護士 池田直樹 …………………………………………………… 299 

土壌のダイオキシン汚染の対策をめぐる問題点  弁護士 中島宏治 ……………………………… 304 

公害調停で暖策をくぐれたが責任明確化が今後の課題 朝日新聞記者・中村正憲 ………………… 306 

専門家と市民の関係  大阪大学・森住明弘 …………………………………………………………… 308 

 

第7章  参考資料

通告書/回答書/住民監査請求書/施設組合報告書「高濃度ダイオキシン類に係る原因と責任について」/対策協議会要綱/ダイオキシン労災訴訟支援要請の訴え/年表「1983.11 〜 2000.7.14」

 

「編集後記」

 法律事務所アドレス